2008年7月25日に東芝セミコンダクター社が開催した「SpursEngine Developers Forum 2008」中で、同日発足した「SpursEngineパートナーズ会」のメンバー企業が、それぞれの製品・サービスを紹介した。メンバー企業の発表に先立ち、東芝セミコンダクター社システムLSI事業部先端SoC応用技術部担当部長の関口浩氏が、パートナーズ会発足の狙いなどについて講演した(図1)。
SpursEngineパートナーズ会は、東芝が開発した「Cell/B.E.」の設計資産を継承するメディア・ストリーミング・プロセサ「SpursEngine」関連のビジネスを展開するサード・パーティの集まりである。参加企業には、ソフトウェア/ハードウェア開発ベンダー、開発ツール・ベンダー、アプリケーション開発ベンダー、システム・インテグレータなど、合計12社が名を連ねる。「パートナーズ会発足の目的は、共同でSpursEngineの関連ビジネスを開拓し、さまざまな形でSpursEngineのユーザー企業を支援することにある。具体的な活動としては、共同でのマーケティング、市場告知、各種イベントでの共同展示活動などが挙げられる」、と関口氏は説明した。会場には、パートナーズ会の参加企業の展示コーナーも設けられた(図2)。
13社のメンバーのうち7社が、それぞれ製品やサービスについて発表した。まず、講演したのが日本アイ・ビー・エム大和研究所技術理事の中野宏毅氏である(図3)。同社は、Cell/B.E.を2基搭載したブレード・システム「IBM BladeCenter QS22」を販売している。SpursEngineでは、組み込み機器向けにポーティングなどのコンサルティングやカスタムのボード開発、ソフトウェア開発などの受託ビジネスを展開する。中野氏は、「SpursEngineでは、Cell/B.E.ほど高速性が要求されず、PowerPCより高い性能が必要な市場を狙う」、と語った。
Cell/B.E.のソフトウェア開発などを手がけるフィックスターズは、Cell/B.E.のソフト開発で得たノウハウをSpursEngine向けに展開する。同社は、SpursEngine向けのミドルウェアの開発、ミドルウェアのLinuxへの移植、アプリケーションの開発などのビジネスを展開したいとする。また、台湾Leadtek Research Inc.などのボード・メーカーと協業なども検討する。同社代表取締役社長の三木聡氏は、「SpursEngineの開発段階から、ミドルウェア開発を手がけている。例えば、「CEATEC JAPAN 2007」で東芝セミコンダクター社がデモしていたハンドジェスチャ・ミドルウェアの開発の一部を担当した」と、同社の強みを強調した(図4、図5)。
システム・インテグレータの富士ソフトは、組み込み技術を一つの事業の柱に据えている。同社は、同分野におけるソフトウェア開発からハードウェア開発まで、幅広くビジネスを展開している。子会社のOA研究所を通してハードウェアのOEM生産も手がける。富士ソフトも「SpursEngine搭載の「Qosmio」のアプリケーション開発の一部を担当しており、その実績を生かしてSpursEngineの関連ビジネスを展開する」、と同社システム事業本部 営業統括事業部主任の桂井照雄氏は言う(図6)。例えば、並列化、「SPE(Synergistic Processor Element)」のレジスタの有効活用、SIMD(Single Instruction Multiple Data)化などの技術を駆使して、SpursEngineの性能を最大限引き出すプログラムを開発できるとしている。また、SpursEngineを組み込むホスト側のプログラムに関しては、過去の資産を活用し、短期間、低コストで開発する。
東芝情報システムは、Cell/B.E.の開発段階でリファレンス・ボードの開発、リファレンス・キットの開発環境/基本ソフトウェアの開発などを担当した。SpursEngineでも、同様の役割を担ってきた。「その経験を生かし、SpursEngineのハードウェアからソフトウェアまでのシステム開発ソリューション・ビジネスを展開する」、と同社エンベデッドプラットフォーム・ソリュ-ション事業部グループリーダーの古牧正慎氏は説明した(図7)。具体的には、ホストOSの変更に伴うドライバの開発、リファレンス・ボードのカスタマイズ、SPEソフト開発ツールのカスタマイズなどを手がけるとしている(図8)。
エンターテイメント系ミドルウェアの開発会社CRI・ミドルウェアの執行役員研究開発部部長の松下操氏は、「SpursEngineを簡単に使えて、性能を最大限引き出せるミドルウェアを開発する」、と述べた(図9)。そのための強みとして松下氏が挙げたのが、これまで同社が取り組んできた動画再生ミドルウェアの開発、Cell/B.E.を搭載した「PS3」向けミドルウェアの開発、ゲーム機を中心とした組み込み機器へのミドルウェアの実装経験などである。こうした経験に基づくノウハウを生かし、第1ステップとして同社のミドルウェア「Sofdec」をベースとしたエンコーダ/デコーダ(MPEG-2およびH.264)のミドルウェアを開発する(図10)。第2ステップとして、SpursEngineに集積されているエンコーダ、デコーダ、それにSPEを組み合わせたミドルウェアを開発すると言う。
コンシューマ向けのビデオ編集ソフトを販売するサイバーリンクの代表取締役尾藤伸一氏は、1000万画素を超えるデジタル・カメラ、次世代DVD、フルHD対応のディスプレイの普及データを示し、「この3年間のデジタル・メディア市場の拡大スピードは、過去20年間で最大規模だ」、と説明する(図11)。そうした市場に対して同社は、SpursEngineを使ったビデオ編集ソフトのソリューションを提供していくとしている。同社は、今回のフォーラムの中でSpursEngine対応のビデオ編集ソフト「PowerDirector」を使ったデモを行った(図12)。Core2Duo(2.4GHz)搭載のパソコンでMPEG-2からH.264へのトランスコーディングを実行した。ソフトウェア処理で4分52秒かかっていたものが、SpursEngineを使うことによって1分22秒に短縮できた。
台湾Leadtek Research Inc.は、いち早くSpursEngine搭載のボード「WinFastPxVC1100」を開発した。同社Chairman/CEO のK.S.Lu氏が会社の概要を説明し、その後、Audio/Video Communication Product BU Project Managerの金子直樹氏が、開発したWinFastPxVC1100を紹介した(図13)。WinFastPxVC1100は、SpursEngineに加えて128KバイトのXDR DRAMが搭載されている(図14)。インタフェースはロー・プロファイルのPCI Expressである。同社は、加Corel Corp.のビデオ編集ソフト「DVD MovieWriter」をバンドルし、2008年7月末からサンプル出荷を開始する。また、9月中旬以降、SpursEngineの能力をフルに生かせる超解像変換ソフトもサポートしていく予定だ。
このほか講演は行わなかったが、Corel社がSpursEngine対応のビデオ編集ソフト「DVD MovieWriter」を使ったエンコーディングのデモを実施した(図15)。同ソフトは、東芝が製品化したSpursEngine搭載の「Qosmio」にバンドルされている。