
東芝セミコンダクター社は、2007年9月20日、「PLAYSTATION3(PS3)」に採用されている高性能プロセサ「Cell Broadband Engine(Cell/B.E.)」の設計思想を受け継ぐメディア・ストリーミング・プロセサ「SpursEngine」の技術概要を明らかにした(図1)。同社は、これまでCellベースのプロセサを開発していることを公表していたが、その技術を開示するのは今回が初めて。開発したSpursEngineは動画・認識処理エンジンで、パソコンなどを主なターゲットとする。インテル系プロセサやグラフィックス・プロセサとともに使うことを想定している。

Cell/B.E.との大きな違いは四つある(図2)。第1は、Cellに8基搭載したマルチメディア・データの高速処理用プロセサ「SPE(Synergistic Processor Element)」を4基に絞ったことである。第2は、動画処理用としてフルHD(high definition)対応のMPEG-2とMPEG-4/AVC(H.264)のデコーダ/エンコーダを集積したことだ。SPEの搭載個数を絞り、その代わり専用ハードウェアである動画処理用のエンコーダ/デコーダを集積することによって、消費電力を低く抑えることが可能になる。
第3は、Cell/B.E.に搭載した汎用プロセサ「PPE(Power PC Element)」を集積しなかった。これによって、例えばパソコンでは、SpursEngineをインテル系プロセサのコプロセサとすることによってシステム全体をコンパクトに構成できる。しかも、チップの小面積化や低消費電力化を図ることも可能になる。
第4は、外部インタフェースの変更である。Cell/B.E.では、チップ外部とのインタフェースとしてRambus社のFlexIOを採用していた。FlexIOの最大データ転送速度は1端子当たり6.4Gビット/秒と高いものの、パソコンのチップ・セットであるNorth BridgeやSouth BridgeにはPCI Express(1レーン当たり4Gビット/秒)が使われている。このため、パソコンを主なターゲットとするSpursEngineには、外部インタフェースとしてPCI Expressを採用した。
このほかにも、SpursEngine はいくつかの特徴を持つ。例えば、SpursEngine はXDRインタフェースを備え、高速なXDR DRAMを接続することができる。SpursEngineとXDR DRAM間の最大データ転送速度は12.8GB/sである。製造プロセスには設計ルール65nmのCMOS技術を採用した。低コスト化するために、Cell/B.E.に使われているSOI技術を使用していない。
今回試作したチップでは、低消費電力化するために動作周波数を1.5GHzと、Cell Broadband Engineの半分程度に抑えた。このため消費電力は10W台となっている。東芝セミコンダクター社は、2008年前半をメドにSpursEngineのサンプル出荷を開始し、システムLSIの製造拠点である大分工場で量産する予定。同社はSpursEngine技術の詳細およびそれを使ったデモを、幕張メッセで開かれている「CEATEC2007」(10月2日~6日)で展示・公開している。