Cell/B.E.のソフト開発に経営資源を集中してきたベンチャー企業のフィックスターズが、SpursEngineパートナーズ会に参加し、SpursEngine向けのミドルウェア開発に乗り出す。同社Solution Service事業本部長の小林林広氏は、「弊社は、マルチコアプロセサの関連事業に特化しています。対象とするプロセサはCell/B.E.とSpursEngineです。Cell/B.E.関連ソリューションの一つとしてSpursEngineを扱いたい」、と語る(図1)。
フィックスターズは、2002年8月設立のベンチャー企業で、従業員76人のうち8割程度がCell/B.E.関連のエンジニアである。「世界を見ても、Cell/B/E.関連のプロセサに特化してビジネスを展開しているソフトウェア・ベンチャーはフィックスターズだけでしょう」、と小林氏はその特徴を強調する。同社は、ソフトウェア開発以外にもCell/B.E.搭載システム「GigaAccel 180」(図2)を提供しており、現在、Cell/B.E.やSpursEngineの導入に必要な、ハードウェア販売からソフトウェア開発、コンサルティングまで、一貫したサービスを提供する。例えば、最近、みずほ証券のデリバティブ取引の演算処理にCell/B.E.のソフトウェアを提供し、従来の10倍以上の高速化を達成したと言う。
フィックスターズは、SpursEngine開発の初期段階からソフトウェアの開発に携わってきた。同社は、「Qosmio」搭載のソフトウェア「ハンドジェスチャリモコン」の実装を担当した。
「SpursEngineとCell/B.E.のソフトウェア構造はかなり違います。SpursEngineのソフトウェア開発で、そこが一番苦労したところです。Cellの場合は、一つのプロセサの中でプログラムが完結します。一方、SpursEngineの場合はパソコンのPCI ExpressにSpursEngineの拡張ボードを挿入し、アクセラレータのように使います。データ転送のタイミングなども考えなければなりません。このため、ソフトウェアの構造を変える必要があるのです。また、開発環境が十分そろっていない状況でソフトウェアを開発するという難しさもありました。マルチコアのプログラミングに関しては、Cell/B.E.の経験がかなり生きました」と、小林氏はSpursEngineの開発初期を振り返る。
現状、SpursEngineを搭載するシステムのホストプロセサはインテルx86系で、OSは「Windows」である。今後、「Linux」に対応する動きがあり、その開発の一部もフィックスターズが担当する。「Linuxへの移植そのものは、さほど難しいものではありません。ドライバは作り直さなければなりませんが、SpursEngineは設計段階でマルチプラットフォームを意識したアーキテクチャになっているので、ソフトウェアを全部書き換えなければならないという難しさはありません」(小林氏)。
フィックスターズは、SpursEngine向けソフトウェア開発の経験をベースにソフトウェア・ビジネスを展開する。同社は、今後、自社製品も開発したいとしている。「動画像を扱うアプリケーションを考えています。SpursEngineの魅力は、MPEG-2とH.264のデコーダとエンコーダが1チップに集積されており、なおかつSPE(Synergistic Processor Element)で汎用性を持たせている点にあります。動画を取り込みデコードし、なんらかの処理を施し、エンコードするのに適しています」(小林氏)。
フィックスターズは、ハードウェア企業とコラボレーションすることによって、SpursEngineのトータルなソリューションを顧客に提供することを目指している。この7月にSpursEngineパートナーズ会に参加し、SpursEngine対応ソフトウェア開発のためのコンサルティングやアルゴリズム評価を無償で受け付けるキャンペーンも開始するなど、積極的にSpursEngine事業の展開を行っている。
(関連情報:SpursEngine向けアプリケーションポーティングサービス)