エンターテインメント向けミドルウェアを開発しているCRI・ミドルウェアは、東芝が開発したメディア・ストリーミング・プロセサ「SpursEngine」のサード・パーティ・プログラム「SpursEngineパートナーズ会」に参加する。「PS3(PLAYSTATION3)」向けの「Cell/B.E.(Cell Broadband Engine)」用ミドルウェアの開発実績をベースに、SpursEngineが対象とする組み込み機器市場向けのミドルウェアなどを提供する計画である。同社は、2008年7月25日開催の「SpursEngine Developers Forum 2008」(東京・千代田区)で、その詳細を発表する。
CRI・ミドルウェアは2001年設立の会社で、ゲームソフトや業務用ゲーム機器、組み込み機器向けに「CRIWARE」と呼ぶソフトウェア群を提供している。CRIWAREは、映像や音声を高品質化するためのミドルウェアで、製品としては、高画質・高音質の動画再生システム「CRI Sofdec」などがある。
CRI・ミドルウェア執行役員研究開発部部長の松下操氏は、SpursEngineパートナーズ会への参加の狙いを次のように語る(図1)。「これまでCell/B.E.で培ったミドルウェアの開発実績をベースに、SpursEngineの性能を最大限に引き出せる映像向けのミドルウェアを開発する。操作が簡単で、ユーザーが短期間でアプリケーション・ソフトを開発できる仕組みを提供する」。
同社は、高画質・高音質の動画再生システムのSofdecと呼ぶ製品を提供しており、H.264などの動画コーデック、それらデコーダの実装やエンコーディングの手法などに関連する技術を保有している。また、Cell/B.E.向けのソフト開発に約3年の実績があり、SpursEngineに搭載されている「SPE(Synergistic Processor Element)」を有効に使うソフトを開発できる。ゲームやアミューズメントを中心に、SpursEngine以外の各種組み込み機器向けミドルウェアの開発も10年以上の実績がある。「まさに、SpursEngine向けミドルウェアの開発に最適な企業である」と、松下氏は強調する。
CRI・ミドルウェアが開発するのは、SpursEngine向けのSofdecである(図2)。このミドルウェアは、東芝が提供する「CANDI」と呼ぶミドルウェアをラッピングするソフトウェアで、SpursEngine向けアプリケーション・ソフトの開発を容易にできるようにするもの。現状では、解像度がいくつかのサイズに固定されていたり、デコードおよびエンコード時に東芝独自のデータ 形式に変換する必要がある。Sofdecを使えば、画像の解像度やビットレートを任意に設定して高画質な映像を簡単に作り出せるようになる。また、H.264のファイルを直接入力することも可能となる。
「現在は開発の初期段階だ。それでもSpursEngine搭載のH.264エンコーダの画質レベルに満足している。映画や放送局用の映像以外なら、業務用およびプロシューマ向けにも十分利用できるレベルである」と松下氏は言う。
CRI・ミドルウェアにとって、今回のSpursEngine向けSofdecは開発の第一段階に過ぎない。同社は、第二段階のソフト開発も計画している。それは、SpursEngineの本来の能力を生かせるソフトになるという。SpursEngineの能力を引き出すために、CRI・ミドルウェアは、SpursEngineに集積されたハードウェア・コーデックとSPEを組み合わせて使う用途を狙っている。
さらに、用途ごとに機能を限定し、CRI・ミドルウェアが基本的な機能を持つミドルウェアを提供し、そのミドルウェアにユーザーが自分たちのノウハウを作り込んだソフトウェアを組み込めるようにする。例えば、プリンタや複合機向けのミドルウェアで、ユーザーがフィルタリング処理部だけを開発し、そこに各社独自のアルゴリズムを作り込めるようにするソフトウェアである。
同社は、こうしたソフトを「フレームワーク」と呼ぶ。フレームワークの開発に当たっては、ユーザーとの協業が必要だ。CRI・ミドルウェア単独で開発するのは難しい。どういう機能が必要で、どこまでをユーザーが開発するのか、判断するのが困難なためである。松下氏は、この7月に開催されるSpursEngine Developers Forum 2008で、協業可能な顧客を開拓したいと語る。