HD Processing FORUMは、2008年3月19日に台湾・台北の台北国際会議センター(TICC)で「パソコンと情報家電で加速するHD化: グローバル市場と技術の動向」(原題:"HD Driving PC & Digital Media: Global Market & Technology Trend")と題するカンファレンスを開催した。
今回のカンファレンスでは、パソコンや情報家電の市場におけるHD化の最新のトレンドや処理技術に関して、技術開発やビジネスの第一線で活躍中の講師陣を迎えて行われた。台湾は現在、パソコンや情報家電製品の技術開発が最も盛んな地域の一つであり、およそ150人の参加者がTICCのカンファレンス会場に詰め掛け、台湾においてもHD 処理技術への関心が高いことが明らかとなった(図1)。
最初の講演者は、台湾・中華電信(Chunghwa Telecom)有限公司・MOD ディビジョン副所長の陳鏡明氏(Dr. Ching-ming Chen)である(図2)。陳氏は、台湾で現在提供されているHD動画アプリケーション、IPTVについて技術的な視点も交えつつ講演した。
陳氏は中華電信社の光ファイバMOD(マルチメディア・オン・ディマンド)サービスを例に挙げ、IPTVやHDTVの技術について解説した。陳氏が今回解説したIPTV関連の要素技術は、Fiber To The Building(FTTB)、HDTV技術仕様、IPTV用圧縮伸張(コーデック)などである。また、人間の視覚特性にも触れ、現在提供されているIPTVサービスのコーデックでそれがどのように利用されているかを述べた。
IPTVにおけるデータ通信方式に関しては、当初採用され数Mbpsの帯域幅を持つADSLからVDSLへと移行しつつあり、最終的には25Mbps以上の帯域幅のFTTBになると指摘した。
本講演において興味深いトピックは、動画コーデックで利用されている人間の視覚特性である。人間の視覚の冗長性に関する基礎からの解説は、動画コーデックを当然のものとして捉えている開発現場の技術者にとっては目から鱗となった。人間の視覚冗長性を理解することで、動き補償予測テクニックがなぜどのようにビット数を削減しているか、そしてそれにより効率のよい圧縮伸張が可能となっていることを理解できた。
これを受けて、陳氏はIPTVの動画圧縮技術の要である MPEG-4 AVC/H.264 の概要に触れ、最後に中華電信の現在のMODサービス・コンテンツを紹介して締めくくった。
中華電信の陳氏についで東芝セミコンダクター社先端SoC開発センター・センター長の増渕美生氏が講演し、HD映像処理アプリケーションなどに向けたメディア・ストリーミング・プロセッサ「SpursEngine」について説明した(図3)。
増渕氏の講演では、SpursEngineのコンセプトやアプリケーションのデモ動画、今後の計画などが示された。SpursEngineチップは、ソニー社製家庭用ゲーム機の最新版である「PlayStation 3」に採用されている「Cell Broadband Engine」(Cell / B.E.) プロセッサを基に開発された。増渕氏は、SpursEngine がCell/B.E.のDNAを継承しており、フルHD世代の快適なデジタルライフを支援すると強調した。
講演において増渕氏は、SpursEngineのパフォーマンスと能力を具体的に示すために、リアルタイムで顔トラッキングとレンダリング処理を行う「FACEMATION」と呼ぶ3Dグラフィック・アプリケーションと、画像認識と盛り上がりシーンのサムネール生成などを自動的に行える映像インデキシング「顔deナビ」のデモンストレーション動画を披露した。
なお、増渕氏のあと同社・先端SoC応用技術部の濱岡快之氏が、SpursEngineリファレンスキット(SRK)、それに含まれるAPIやアプリケーション・サンプル・プログラムのソースコード、SRK貸与プログラムなどを紹介した。
10分の休憩およびデモ展示閲覧の後、台湾・Institute for Information Industry (III)・Market Intelligence Center(MIC)のシニア・アナリスト、周士雄(Charles Chou)氏が講演、HD対応デジタルメディア機器の市場トレンドについて解説した(図4)。
周氏は、まず”HD World”が9つの主要な電子機器、すなわちデスクトップ・パソコン、デジタル・ビデオカメラ、デジタルカメラ、DVDプレーヤー/レコーダー、セットトップボックス(STB)、家庭用ゲーム機、液晶モニター、液晶テレビ、ノートパソコンのセグメントから成ると定義した。
この”HD World”の定義に基づいて、周氏は上述の電子機器セグメント毎に詳細な統計データやチャートを示し、HD対応やフルHD対応の電子機器の魅力を強調した。さらに、各電子機器セグメントの緻密な市場調査データを多く用いつつ、セグメント毎の市場トレンドや課題について触れ、セグメント毎にそれぞれ違いはあるものの、コンスーマ向け電子機器の市場全体としてはHD化が着実に進んでいることを示した。周氏は講演の終わりに、液晶テレビがHDデバイスの中心となり、HD化が加速されると結論づけた。
本カンファレンス最後の講演者は、台湾・Leadtek Research(以下、リードテック)社の Senior Special Assistant to President、劉孟賢(Rack Liu)氏である(図5)。リードテック社はパソコンの周辺機器や関連製品などのメーカーであり、劉氏はパソコン・プラットフォーム上でのHD処理について、ハードウェア開発に携わるメーカーの視点から講演を行った。
劉氏はパソコンの技術の詳細、CPUやGPUの進化に触れながら、究極的には現在のパソコンのアーキテクチャではフルHD映像のデコードやエンコード処理には演算性能が十分ではなく、SpursEngineのように演算性能を追加する何らかの手段が必要であると述べた。
(大場淳一=テクノアソシエーツ)