第1回HD Processing FORUM - 「デジタル情報家電・パソコン市場を牽引するHD化とその課題」を開催

第1回HD Processing FORUM
「デジタル情報家電・パソコン市場を牽引するHD化とその課題」を開催

図1:セミナーの様子 セミナーの様子

 HD Processing FORUMは、2007年12月19日に東京で「デジタル情報家電・パソコン市場を牽引するHD化とその課題」と題するセミナーを開催した(図1)。日本ではハイビジョン放送やハイビジョン対応の薄型テレビに加えて、AVCHD対応のビデオカメラが普及してきている。ハイビジョン対応のデジタル・ビデオカメラは、2006年に約23万台、2007年には約56万台の市場規模になる見込み(キヤノン調べ)。この数は、日本国内のビデオカメラ市場全体の約4割に相当する。

 今回のセミナーはHD Processing FORUMが開催した第1回目のセミナーである。情報家電、動画編集ソフト、ゲーム開発、パソコン・インターネット、半導体という分野におけるHD化の動きと課題を紹介した。HDの動画や映像の処理という極めて限定された分野のセミナーにも関わらず参加者は100人程度が集まった。展示・デモ会場では参加者の熱心な質問が飛び交い、HD動画や映像の処理技術や市場に対する関心の高さが伺われた。

最大の感動を与えるハイビジョン映像

図2:デジタルメディア評論家・麻倉怜士氏 デジタルメディア評論家・麻倉怜士氏

 最初に、「進むデジタル情報家電の高画質化とそのインパクト」と題して日本画質学会副会長、津田塾大学講師でデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が講演した(図2)。同氏は「ハイビジョンは、画質、臨場感、コンテンツという三つの要素があいまって、ユーザーに最大の感動を与える。ハイビジョン・メディアの登場は25年以上にも亘るオーディオ・ビジュアルの歴史において最大のエポックである」と、そのインパクトを解説した。

 1976年にAVメディアとしてVHSが登場し、1981年にはレーザーディスクが登場した。いずれもアナログ映像だった。1995年になるとDVDが登場し、デジタル映像の時代に入る。そして、2006年にBlu-ray Disc(ブルーレイディスク)の登場でハイビジョン・メディア時代の幕が開く。

 麻倉氏は、「感動は情報量に相関する。Blu-ray Discなどのハイビジョン・メディアは、DVDの6倍もの感動を与える」と言う。同氏は、バイビジョンで川上から川下へ、コンテンツ画質、メディア画質、ディスプレイ画質といった三つの画質革命が進行すると説明する。コンテンツ画質の革命では、映像に制作側の意志や想いを織り込むことが可能になり、ディレクターズ・インテンションが重要になる。メディア画質の革命では、ブルーレイディスクレコーダの画質向上としてAVCハイプロファイルを挙げた。ディスプレイ画質の革命では、有機ELディスプレイの登場を挙げている。有機ELディスプレイは、映像コントラスト、ピーク力、精細力の点で人類が初めて手にした表現力だと、麻倉氏は強調した。

パソコンの高性能化と、編集ソフトの操作方法簡易化がHDビデオ普及に重要

図3:サイバーリンクトランスデジタル・松本龍氏 サイバーリンクトランスデジタル・松本龍氏

 サイバーリンク トランスデジタルのプロダクトマーケティング・グループ松本龍氏は、 ビデオ編集ソフトを日本で販売する立場から、「動画編集ソフトにおけるHD化のトレンドとその課題」と題してビデオ編集をめぐる現状について解説した(図3)。まず、同氏が指摘したのがコンシューマ市場における映像ニーズの2極化である。

 一つが、家族や身近な環境の記録をきれいに簡単に残したいというニーズである。これが、ビデオカメラを使う大部分のユーザーの購入理由である。C-NEWSの調査によると、「赤ちゃん誕生のきっかけに購入したものは」との問いに40%の人がデジタル・ビデオカメラを挙げている(20歳以上の既婚者でビデオカメラを所有もしくは検討中のインターネット・ユーザー300人を対象にした調査)。

 もう一つが、少数ではあるが、マスメディアに頼らずに、独自のコンテンツを低予算で発信したいというニーズである。「YouTube」などの動画配信サイトの普及が、こうしたニーズの高まりを後押ししている。総務省「平成19年度版情報通信白書」によると、日本におけるYouTubeの利用者数は2007年2月時点で1017万人と、1000万人を越えている。

 日本におけるデジタル・ビデオカメラの画質別販売台数では、週次ベースのBCNランキングで2007年9月3日に、フルHD画質のビデオカメラがSD画質のビデオカメラの販売台数を越えた。C-NEWS調査によると、こうしたビデオカメラに対する最大の不満としてユーザーは、「準備に時間がかかり、チャンスを逃しやすい」ことを挙げている。松本氏は、チャンスを逃さないためにはビデオを回し続ける必要があり、その結果として編集の必要性が高まるとみている。こうした背景を踏まえ、同氏は、HDビデオの普及にはHD画質の映像でもスムーズな編集を可能にするパソコンの高性能化と、編集ソフトの操作方法を簡易化する必要性を指摘した。

13秒の映像のプリレンダリングに10台のパソコンで1カ月

図4:CRI・ミドルウェア 松下操氏 CRI・ミドルウェア 松下操氏

 3番目に講演したのが、ゲーム向けのミドルウェアを開発しているCRI・ミドルウェアの執行役員研究開発部部長の松下操氏である(図4)。同社は、「PS3」や「Xbox360」、「Wii」、「DS」、「PSP」向けの映像・音声用ミドルウェアの開発を専門とするソフトハウスである。松下氏は、ゲーム向け動画システムに対する要求条件の一つとして、高画質を挙げた。ゲームでは、オープニングの映像としてどんなに短くても極めて高画質な映像が求められる。同社は、H.264などの標準的なコーデックに加えて、10Mbps~70Mbpsと幅広いビットレートに対応できる「Sofdec」と呼ぶ独自のコーデックを開発している。

 Sofdecを使ったHD映像の再生では、PS3を使う場合、「Cell」に8個搭載されている「SPE」に動画、グラフィックス、オーディオと機能ごとに処理を複数のSPEに割り振っている。動画処理では、走査線方向に映像をスライスし、スライスごとに一つのSPEに処理を割り振る。同社は、こうして高画質な映像のスムーズな再生を可能にしている。

 問題は、レンダリングである。松下氏は、「13秒の映像のプリレンダリングに10台のパソコンを使って1カ月かかる」とゲーム映像制作の現状を明らかにし、高性能なパソコン登場への期待を訴えた。

 松下氏は、講演途中に同社が作成したゲームのオープニング映像のデモを行った。大型スクリーンに映し出された高精細な映像の迫力に参加者は魅了させられた。同氏は、講演の最後に、「HDは本当に必要か」と問いかけ、データ処理に多くの時間がかかり、コスト的にも高いものの、「一度HDを体験してしまうと、もう後戻りはできない」と、講演を締めくくった。

インターネットでRIAの流れが加速

図5:日経パソコン編集長 藤田憲治氏 日経パソコン編集長 藤田憲治氏

 日経パソコン編集長の藤田憲治氏は、「台頭するハイビジョン品質のネットコンテンツ」と題して、インターネット上で進行中のRIA(rich internet application)への急速な流れについて解説した(図5)。RIAは、ユーザー・インタフェースにFlashやJavaアプレット、Ajaxなどを用いて、高い表現力や操作性を実現したアプリケーションの総称である。同氏は、米Adobe社と米Microsoft社といった、代表的な二つの企業の戦略を取り上げて説明した。

 Adobe社は、7割以上の高い普及率を誇る「Flash」の最新版「Flash Player 9 Update3」を2007年12月に公開した。同ソフトは、標準的な動画コーデックであるH.264の動画再生に対応し、1080pのHD品質までサポートしている。このほか、Adobe社は「AIR (Adobe Integrated Runtime)」と呼ぶ新戦略も展開している。AIRは、FlashやPDF、HTMLなどの一つの環境で利用できる新しいデスクトップ上のアプリケーション実行環境である。AIRを使えば,Webアクセスに代表されるインターネットの使い方と密に連携しながら、Webブラウザの枠にとらわれないアプリケーションを開発できるようになるという。

 これに対してMicrosoft社は、Webブラウザ・プラグイン・ソフトの「Silverlight」を開発した。Silverlightは、ビデオやアニメーションのほか、操作性や表現力が優れたRIAをWeb上で実現できる。サポートするフォーマットは、WMV(Windows Media Video)、VC-1、WMA(Windows Media Audio)、MP3 Audioなどがある。

 こうした動向を踏まえ、藤田氏は「インターネット上のコンテンツは、管理が容易な中央集権型から、クライアントのリソースを使い切るRIA時代へ移行する」と語った。

「SpursEngineⅡ」や評価ボードのリリース時期を明らかに

図6:東芝セミコンダクター社 増渕美生氏 東芝セミコンダクター社 増渕美生氏

 最後に講演したのが、東芝セミコンダクター社システムLSI事業部先端SoC開発センターセンター長の増渕美生氏である(図6)。同氏は、「メディアストリーミングプロセッサSpursEngine~課題解決に向けた取り組み~」と題し、「SpursEngine」を搭載したデモを交えて、その特徴と今後の展開について説明した。

 2007年にHD対応ビデオカメラが日本国内で50万台を越えた。また、HD対応テレビの全世界における出荷数量は年30%以上増加し、2008年には3500万台と予測されている。一方、インターネット上では「YouTube」に代表されるCGC(Consumer Generated Contents)が急増し、動画編集ニーズが高まりつつある。そんな中で、課題として浮かび上がってきたのが、パソコンを使った動画編集にかかる処理時間、主にエンコード処理にかかる時間の長時間化である。こうした課題を解決するため、東芝セミコンダクター社はSpursEngineを開発した。

 SpursEngineは、Cell/B.E.に搭載されているSPE(Synergistic Processor Unit)と呼ばれる演算器を4個搭載し、映像処理向けにH.264およびMPEG2のデコーダとエンコーダを搭載している。SpursEngineは、ホストプロセサのコプロセサとして使われる。ソフトは、基本ソフトウェアAPIとミドルウェアAPIの2層構造になっており、ホスト・システムからSpursEngineにSPEコードを送り込んで実行する。

 増渕氏は、ターゲット市場として家庭用にAV機能を強化したパソコンを挙げた。具体的には、AVコーデック処理、リビング・ルームの各種機器をハンド・ジェスチャによって操作する認識処理や、SD映像をHD映像にアップコンバージョンする処理、映像の自動分類・サムネイル作成処理などを挙げている。そして、「CEATEC2007」で展示した「FACEMATION」や「ジェスチャリモコン」、「顔deナビ」、「超解像技術」のデモ・ビデオを紹介した。

 増渕氏は、最後に、性能対消費電力に優れる「SpursEngineⅡ」の開発計画や、2008年第2四半期にSpursEngine搭載の評価ボードを提供することを明らかにした。



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