AVCHD方式に対応したハイビジョン・ビデオ・カメラが国内電機メーカーから続々と発表される一方、その加工や編集などを行うための動画編集ソフトの対応は後手に回っていた。そのような状況が今年に入ってから次第に変わりつつある。
主要な動画編集ソフト・ベンダーの中でAVCHD対応をいち早く打ち出したのは、コーレル(旧インタービデオ)社である。2007年6月発売の「Ulead VideoStudio 11」でAVCHD規格の映像取り込みをサポートすることを正式に表明した。 ついで、米Sony Creative Software社の「Vegas Movie Studio Platinum 8.0」が、ソニー社製AVCHD対応ハンディカムからの入力に対応している。
さらに今年後半に入り、米Apple社が「Final Cut Express 4」で、米Sony Creative社がプロ用の編集ソフト「Vegas Pro 8」で、台湾・サイバーリンク社が「PowerDirector 6」VistaでAVCHDに対応した。(関連記事:サイバーリンク社インタビュー)
このように、AVCHD対応の編集ソフトウェア環境は急速に整備されつつある。 問題は、それを処理するパソコン・ハードウェアの周辺にありそうだ。
まず一点目の問題は、ハイビジョン・ビデオ・カメラを新しく購入するユーザーが、パソコンの使い方や最新のAV技術に詳しいヘビー・ユーザーでは必ずしもないことである。いわゆる「赤ちゃん需要」などと言われるように、消費者がビデオ・カメラを購入するのは、子供が生まれる時や入学式、運動会などの時期が多い。
このように家庭でのライフ・イベントを記録したいユーザーは、必ずしもパソコンを持っていなかったり、持っていてもAVCHD規格のフルHD動画編集を快適にこなせるだけの性能を持たないパソコンであったり、ということが多いのである。したがって、AVCHDビデオカメラを買って、手持ちのパソコンで動画編集を試しにやってみたら、編集ソフトの動作があまりに重く愕然とした、などということが起きるのだ。
第二に、価格対性能比の問題がある。最初はあまり詳しくなくても、個人ユーザーのITリテラシーは機器を使いこなすにつれ向上する。AVCHDビデオ・カメラには高い動画処理性能を持ったパソコンが必要であるという理解も全体的に進みつつある。AVCHD規格の動画編集を一通り快適に行うことができるパソコンのスペックは、例えば以下のような環境である:
しかし、このような最新の高性能パソコンは、どのメーカーのものも当然ハイエンドの高価な機種となる。結果的に、AVCHDビデオ・カメラが普及するにつれて、個人ユーザー・レベルではそのような高性能パソコンにはなかなか手が出せない、という場合も増えつつあるのが現状だ。
上述のような、一般的な個人ユーザーの本音は、例えば「価格.com」などのクチコミ掲示板などに垣間見ることができる。そこでは、AVCHDビデオ・カメラの動画をパソコンに取り込んだものの重すぎて編集ができない、あるいは、フルHD動画のエンコードをしてみたら、あまりの遅さに耐えられない、等といった悲鳴にも似た赤裸々な書き込みがかなり多く投稿されている。
そんな中、高性能なストリーミング処理性能を持つ「SpursEngine」のようなプロセッサ搭載のパソコンやデスクトップPC向けPCI-Expressボードが欲しいという、一歩踏み込んだニーズ(例えば、価格.com『SpursEngineのPCへの搭載』)も散見される。
現在の市場規模では、ハイビジョン向け動画編集だけではニッチ(すき間)市場と言っても差し支えない程度だろう。しかし、今後ハイビジョン・テレビ、ハイビジョン・ビデオ・カメラ、次世代DVDレコーダーが市場の主流になることは既定の路線である。フルHD動画を手頃な価格のパソコンで編集して家族や友人と共有したり、昔撮りためたVHSビデオ映像をパソコンにキャプチャし、アップコンバート、高圧縮率のMPEG-4 AVC/H.264やDivX形式でエンコードした後アーカイブ、といったニーズはますます高まってくる事が予想される。
既存のハイエンド中心のマルチメディア・パソコンとは異なった、ミッドレンジや普及価格帯向けのマルチメディア・パソコンという新しい市場セグメントで、どのパソコン・メーカーがトップシェアを獲得するのか、この分野の今後の動向から目が離せない。 (大場淳一=テクノアソシエーツ)