ハイビジョン化:先行する日本、遅れる米国・欧州 - CEATEC JAPAN 2008にみる技術動向④

ハイビジョン化:先行する日本、遅れる米国・欧州
CEATEC JAPAN 2008にみる技術動向④

 「日本ではビデオカメラの販売台数の約8割がハイビジョン・ビデオカメラで占められる。米国・欧州では、ハイビジョン・ビデオカメラの販売比率はまだ2割程度に過ぎない」。日本のエレクトロニクス分野で最大級の展示会「CEATEC JAPAN 2008」でパナソニックとソニーの説明員が異口同音に、ハイビジョン・ビデオカメラの地域による普及速度の違いをこのように説明した。HD映像を「撮って」、「見て」、「加工して」、「保存する」というHD Processingにおいて、その最初のステップである「撮る」環境のハイビジョン・ビデオカメラがHD Processing普及の解を握る。

表1:薄型テレビ、地上波デジタル・テレビ放送、Blu-ray Disc、ビデオカメラの普及率 薄型テレビ、地上波デジタル・テレビ放送、Blu-ray Disc、ビデオカメラの普及率

 日・米・欧のハイビジョン・ビデオカメラの普及速度でこのような大きな差が出る理由として、「見る」環境におけるHD化の浸透度が大きく左右していることが考えられる。ビデオカメラのHD化が進んでも「見る」環境が整わなければ、ハイビジョン・ビデオカメラを購入する意味はない。表1は、日・米・欧における薄型テレビ、地上波デジタル放送、ブルーレイ・ディスク(Blu-ray Disc)の普及率を比較したものだ。この表から、日・米・欧におけるハイビジョン・ビデオカメラの普及速度の違いが読み取れる。

HDテレビ放送の普及の遅れが影響

 薄型テレビの普及率は、日本と米国がともに40%を超えており、欧州が約30%と低い。その一方で、地上波デジタル・テレビ放送の普及率を見ると、英国の84%を筆頭に、欧州の国々は軒並み40%を超えている。米国は13.7%と依然低いレベルにある。日本は、ほぼ薄型テレビの普及率と一致している。

図1:各国のアナログ・テレビ放送から地上波デジタル・テレビ放送への移行時期 各国のアナログ・テレビ放送から地上波デジタル・テレビ放送への移行時期

 欧州で地上波デジタル・テレビ放送の普及率が高い理由として、その開始時期が早かったことが挙げられる(図1)。英国が1998年9月に、スペインが2000年5月に放送を開始している。ほかの国でも2005年までに地上波デジタル・テレビ放送を開始している。その一方で、HD映像を映す薄型テレビの普及率は日本・米国と比べて低い。これは、欧州でのデジタル・テレビ放送がHD化ではなく、多チャンネル化を目的に進められたことが原因だ。そのためスタート当初の放送はHDではなく、SD放送だった。欧州でHDテレビ放送がスタートしたのは2004年である。Euro1080社によって開始された。多チャンネル化が進んだ欧州では、広帯域を使うテレビのHD化が遅れ、それがハイビジョン・ビデオカメラの普及の遅れにつながっている。

 一方米国では、地上放送事業者にとってデジタル化は、当初、単なる負担増としてしか捉えられていなかった。地上放送を再送信するケーブルテレビ事業者も、HD映像の再送信にSD映像の3倍の帯域を必要とするため、設備投資の負担が大きく放送のデジタル化には消極的だった。また、米国では、視聴者全体の8割程度がCATVや衛星放送を利用している。CATVや衛星放送の受信者はアナログ・テレビ放送が停止されても、直接的なトラブルに巻き込まれることは少ない。このため、米国におけるアナログ・テレビ放送の停止に対する消費者の認知度も低かった。HD映像を見る機会の少ない人にとって、通常のSDビデオカメラより高価なハイビジョン・ビデオカメラを購入する動機は生まれにくい。

海外でのハイビジョン・ビデオカメラの普及は2010年以降

 こうした状況も、ここ数年で変わっていくだろう。理由は二つ。一つがアナログ・テレビ放送の終了、もう一つがブルーレイ・ディスクの普及である。2009年から2012年にかけて各国でアナログ・テレビ放送が停止される。米国では、2009年の2月にアナログ・テレビ放送が終了する。日ごろから高画質な映像をHDテレビで見ることができるような環境が整えば、HD映像に対する認知が広がり、ハイビジョン・ビデオカメラ普及の基盤が出来上がる。欧州では、2005年にHD映像を高効率で圧縮する衛星放送の規格(DVB-S2)が発表され、衛星放送を中心に放送のHD化が進んできた。2007年には、地上波放送でも同様の規格(DVB-T2)が発表され、今後放送のHD化が進むとみられる。

 さらに、こうしたHD映像を見る環境をブルーレイ・ディスクの普及が後押しする。2008年2月、ようやくブルーレイ・ディスク対HD DVDの規格争いに終止符が打たれ、HDディスクの普及のベースが出来上がった。米国の調査会社米Strategy Analytics社の予測によると、2008年のBlu-ray Discの普及率は、日本・米国・欧州で、それぞれ15%、10%、7%だが、2012年には日本が55%、米国が44%、欧州が32%と一気に拡大する。

 このようにHD Processingの「見る」環境が整うことによって、「撮る」ための機器ハイビジョン・ビデオカメラが普及する。少なくとも2010年以降には、海外でもハイビジョン・ビデオカメラが急速に普及するだろう。ちなみに、電子情報技術産業協会(JEITA)の予測によると、2010年のビデオカメラの需要は全世界で約1800万台に達する。このうちハイビジョン・ビデオカメラの占める比率が2010年に8割程度になるとの予測もある。

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