パソコン市場は、2007年世界出荷台数ベースで対前年比14.7%と依然高い成長を続けている。そのパソコン市場の成長を牽引するのはパソコン関連の技術の進化だ。2008年6月3日~6月7日に台湾で開催されたパソコン関連の技術・製品の展示会「COMPUTEX TAIPEI 2008」からパソコンの三つの進化が見えてきた。第一は小型・低価格ノートパソコン、いわゆるUMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)、第二はHD(High Definition)映像を扱えるパソコン、第三はグラフィックス性能を追求するゲーム向けパソコンへの進化である。
UMPCは、台湾ASUSTeK Computer Incが2007年10月に台湾で発売した「EeePC」が火付け役となった。COMPUTEX TAIPEI 2008では、ASUSTeKをはじめに、台湾のAcer Inc.やGIGABYTE Technology CO., LTDなど各社のUMPCが一斉に展示されていた。ASUSTeK 社は、COMPUTEX TAIPEI 2008に合わせて新バージョン「Eee PC 901」を発表、展示していた。これまでのEeePCに比べて、ディスプレイが7インチから8.9インチへ大型化しており、Webの横幅が一つの画面に収まるようになった。価格は、1万6988台湾ドル(約5万9000円)である。搭載OSとして「Windows」と「Linux」を用意した。
また米Intel Corp.のブースでは、同社が低価格のインターネット・パソコン向けに開発した低消費電力のマイクロプロセサ「ATOM」を搭載した各社のUMPCが展示ブースの一角を占めていた(図1)。さらに、ATOM対抗のプロセサ「C7-M」を開発・販売している台湾チップ・セット・メーカーVIA Technologies, Inc.のブースでも、C7-M搭載の各社UMPCが展示スペースの半分程度を占めていた(図2)。
UMPCは、スマートフォンとノ-トパソコンの中間に位置づけられる。今後普及する可能性が高いモバイル・インターネットという市場を狙った製品である。UMPC自体は2年ほど前からあるが、今回話題を集めているのはASUSTeKが、399米ドルという低価格のUMPCを発売(2007年10月)したのがキッカケだ。500米ドル以下という価格が2台目のパソコン需要を喚起した。さらに、Intel社やVIA社が、低価格、低消費電力のマイクロプロセサを製品化し、こうした流れを加速している。
第二の進化はパソコンのHD化である。ノートパソコンからデスクトップまで、各社ともHD映像を再生できるパソコンを謳った展示に大きなスペースを割いていた。例えば、Acer社は、「Sensational Cinema Intensity」と題して、ノートパソコン「A8920」に高画質なシネマ映像を再生していた。ディスプレイは18.4インチで、アスペクト比16:9、画素数1920×1080のフルHD仕様である。同社は、デスクトップ・パソコンでもHD再生機能を内蔵した最新のAMD(Advanced Micro Devices)社製チップセット「AMD 780G」を搭載したデスクトップ・パソコン「Aspire M5201」などを展示していた。ディスプレイやTVなどへ高画質な映像をスムーズに送るため、家電やAV機器向けのデジタル映像・音声入出力インタフェースであるHDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子も備えている。
こうしたパソコンにおけるHD化の流れは、DVDの規格化争いに終止符が打たれたことが大きい。今後、「Blu-ray」コンテンツの普及に伴い、パソコンにもHD映像の再生機能を搭載することが不可欠になる。Intel、AMDの両社は、HDの再生機能を取り込んだチップセットの充実に力を入れている。Computexで両社とも、HDの再生機能を搭載したチップセット「G45」や「AMD M780G」などを発表している。
現状、こうした強化の中心は、HD映像のデコード機能である。Blu-rayコンテンツをパソコンで見るだけならそれで十分である。しかし今後、HD映像を撮影できるAVCHD(Advanced Video Codec High Definition)ビデオ・カメラが普及し、HD映像を編集したり、「H.264」から「MPEG-2」、あるいは「VC-1」などのフォーマットへ変換したりすることが予想される。この場合、HD映像のデコード機能に加え、エンコード機能の強化が必要になる。ただし現状、エンコード機能を強化したチップセットはまだ少ない。今後、HD映像のエンコード/デコード機能を持つチップが注目を集めることになるだろう。
第三の進化は、グラフィック機能を強化した高性能なゲーム用パソコンである。Acer社は2008年5月に発表した「Aspire PREDATOR」を、ASUSTeK社もゲーム向けパソコン「ARES CG6155」を展示していた(図3)。Aspire PREDATOR は、CPUにIntelの「Core2 Quad」を、GPUにおNVIDIAの「nForce 780i SLI」を採用している。ARES CG6155も最先端のCPUとGPUをそれぞれ四つ搭載している。
ゲーム用のパソコンは、数百Wと消費電力が極めて大きい。最先端の高性能なCPUとGPUが使用されるためである。例えばIntel社のCPU「Core2Quad」は、TDP(Thermal Design Power)で100W近い。NVIDIA社製次期GPU「 GT200」のTDPは250Wに達するとみられている。COMPUTEXの展示会場では、各社とも、マーザーボードに搭載されるGPUやCPUを冷却する装置の派手さを競っていた。