フルHD対応テレビでSD映像を見る?

フルHD対応テレビでSD映像を見る?
重要さを増すアップコンバート技術

 デジタル・テレビの高画質化が急速に進んでいる。各社からフルHD対応を謳った液晶テレビが市場に続々投入されている。2007年9月のBCNランキングによると、薄型テレビ全体のフルHD化率は、25.6%という。32型で4.7%、37型で68.5%、40型では83.4%と、大型画面でのフルHD化が急速に進んでいることがわかる。

 その一方で、テレビで見るコンテンツのHD化も進んでいる。米調査会社のIn-Stat社は、アジア・太平洋地域のHDTVコンテンツ配信の市場規模が32億米ドルに達し、2012年には約81億米ドルに達すると予測している。日本の2006年映像コンテンツ全体の市場規模が7100億円(財団法人デジタルコンテンツ協会)であることを考えると、流通コンテンツのHD化も急速に進むことになる。フルHD映像を家庭で楽しむ時代が到来している。

求められる映像の多様化に対するソリューション

 ところが、これまで個人がビデオ・カメラを使って撮りためた映像は事情が多少違う。SD映像が多いからだ。AVCHD対応などのHDビデオ・カメラが各社から販売されてはいるが、市場で使われているビデオ・カメラは依然SD画質のカメラが多い。すなわち、こうしたユーザーの一部は、フルHD対応のテレビでSD画質の映像を見ていることになる。テレビ画面が大きければ大きいほど、見た目の画質は粗くなる。

 そこで注目を集めているのが、アップコンバート技術である。アップコンバート(アップスケーリング)とは、従来のアナログ/デジタル・テレビ放送の大きさにあたるSD画質の映像を、HD画質に拡張することをいう。一般的なSD画質の映像は640×480画素で構成され、これをアップコンバートすることによってHD画質の1280×720画素あるいはフルHD画質の1920×1080画素に拡張する。もちろん、既存のテレビの回路自体にアップコンバートの機能は搭載されている。しかし、その処理性能には限界がある。

図1:東芝による「超解像技術」(CEATEC 2007) 東芝による超解像技術(CEATEC 2007)

 最近、この分野で注目を集めたのが、東芝が「CEATEC JAPAN2007」で発表した超解像技術である(図1)。高性能プロセサであるCellの設計思想を継承した「SpursEngine」をパソコンに搭載し、独自開発のアルゴリズムを使ってSD映像をHD映像に変換する。同会場で実施されたデモでは、MPEG-4AVC/H.264で圧縮したSD映像(720×480画素)をデコードし、フルHD映像(1920×1080画素)にアップコンバートし、鮮鋭化してパソコン画面に表示していた。

 また、オランダのNXP Semiconductors社は、2007年9月にアップコンバート機能を搭載した液晶テレビ向け動画ポストプロセサ「PNX5100」を発表している。同プロセサは「Motion Accurate Picture Processing」と呼ぶ機能を搭載しており、フルHD画質(1920×1080p(120Hz))へのアップコンバートをサポートしている。2008年第1四半期に量産予定という。

 映像分野ではHD化の過渡期にあり、セット・メーカーは画質を落とさず多様な画素数の映像に対応しなければならない。また、MPEG-2、MPEG-4AVC/H.264、VC-1(WMV9)、Flash 、DivXなど、インターネットでやり取りされる映像の圧縮・伸長方式も多様化している。今後、こうした映像の多様化に対するソリューションがセット・メーカーに求められることになるだろう。

(宮崎信行=テクノアソシエーツ)


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